「もしかして、パッションフルーツの水耕栽培って、難しいかも?」と気付いてきたのかもしれません。
その原因は、肥料にあります。
トマトなどの水耕栽培をテーマにしたブログをよくみかけますが、「水耕栽培ってすごいなぁ」という感想を持っています。ところが、パッションフルーツはとなると、正直、蔓葉ばかりが繁り、実の収穫は数個というものばかりのように思います。
「そんなことない!」という管理人様がおられましたら、是非コメントをお願い致します。失礼をお詫びさせていだたいた上で、参考にさせていただきたいと思います。
既に、私がパッションフルーツ用の水耕栽培装置を作成中であることをご存知の方もいらっしゃるでしょう。二層オーバーフロー式装置で、栽培槽に12ℓ、貯水槽に24ℓのコンテナを使用しています。一本の株を試験的に育てるためのもので、その容量としては、十分かと思います。栽培槽への培養液供給をスプレーバー方式とし、培養液に多くの酸素が溶けこむことを狙っています。
そして、培養液の補給量が外部から容易に判るように、フロートと錘を使うことを思いつき、実現しました。
このあたりまでは、猛烈に鈴なりになる実を思い描きながら、希望に燃えて装置を作っていましたが、
「そろそろ肥料について調べないといけないな」ということになりました。
まず、パッションフルーツの水耕栽培例について調べると、先にも述べたような状況であることがわかりました。いずれも個人の趣味でやられているようですが、実の収穫に限れば、土耕栽培に大きく及ばないものばかりが目に付きます。
調査目的は、使用している肥料と収穫状況のデータ収集でしたが、使用肥料に言及していないものがほとんどで、唯一、ハイポニカという肥料使用で収穫は不明という一情報しかみつからず、データとしてが不十分でした。
このころから、パッションフルーツの水耕栽培に手をだそうとしている自分に危機感を感じだしたのです。・・・パッションフルーツのプロ達が水耕栽培に手を出さないのは?もしかしてだめだから?と。
しかし、「乗りかかった船。やり抜くべし。成果を得ればすごいことだ!!」と奮起し、肥料の調査を継続しました。
適切な肥料が存在し、適切に管理すれば、成果は良い筈ですから。
まず、管理面で、水耕栽培装置に更なる改良が必要であることが判明しました。極力、培養液からの水分蒸発が抑えられる構造にしておりますが、水分蒸発は0ではないでしょう。培養液を注ぎ足す毎に、知らず知らずに肥料濃度が高くなっていく傾向がある筈。そうなると、肥料焼けのリスクが高まります。根からの老廃物もあるという文献も見ました。
このような理由から、培養液は定期的に全て排出し、新しいものと交換する必要があるのです。
運用中の水耕栽培装置は、株が植え込まれ、アルミシートカバーで覆われています。それをガザゴソと分解するような方法で排水するわけにはいきません。そこで、コックをひねるだけで装置内のほぼ全ての培養液を排出できるようにしました。
本題ではないのですが、その構造をご説明しますと、栽培槽では、底面すれすれに吸い込み口を配し、極力底の水まで排出可能としています。オーバーフローの水面よりも低い高さの配管で、外の配管と接続します。そして、外の配管にコックを設け、排水の吐き出し口を吸い込み口よりも低い位置とすることにより、コックが開いたときに、サイフォンの原理で栽培槽の水が排水されます。
貯水槽では、極力、底まで水を吸い上げることができるように、水中ポンプを取り付けてあります。
以上により、水中ポンプを動かしながら、装置全体の培養液を栽培槽の排水配管から排出できるようにしています。
さて、水耕栽培用肥料の調査ですが、おおかたは、次の2銘柄3種に絞り込まれるようです。
土耕栽培では、植物の成長に必要な微量要素が培養土に含まれているために、土耕用肥料には、ほとんど微量要素は含まれていません。一方、水耕栽培の場合、水の中に微量要素は存在しませんので、肥料にそれを含ませています。そこが水耕栽培用肥料の大きな特徴です。
次の3種は、勿論その特徴を持っています。
- ※OATハウス(10kg大袋)
- ※OATハウス(ボトルセット)
- ハイポニカ
※大塚ハウスからOATハウスと名称変更されたようです。
※【2014.12.21追記】後述の筑波大学農林研究所で使用している『養液土耕2号』は必要成分をすべて含ませているために、高濃縮液を作成すると凝固する成分が混在しています。そのため、高濃縮で保存ができません。
一方、OATハウス肥料では、高濃縮で混じり合うと凝固する成分を1号、2号などと別粉末とすることにより、1号高濃縮液、2号高濃縮液などとして保存可能です。
調査結果を表にしてみると、
OATハウス10kg大袋 | OATハウスボトルセット | ハイポニカ | |
成長速度 | ◎ | 不明 | 〇 |
価格安さ | ◎ | △ | △ |
使い易さ | △ | 〇 | ◎ |
特徴 | プロ仕様 | 家庭菜園向け | 家庭菜園向け |
実験対象がパッションフルーツではありませんが、お庭でトマト&水耕栽培というブログを拝見しますと、OATハウス10kg大袋(実際には小分けで購入)は、ハイポニカを使った場合の成長速度を上回っています。OATハウスボトルセットは、大袋の実験の場合と処方が少し異なりますが、使用する分の粉末については同一ですので、OATハウス大袋に準ずる結果になるように思います。
価格的には、OATハウスボトルセットとハイポニカは、家庭向けの切り売り感があり、割高です。10Kgの大袋は、パッションフルーツの水耕栽培装置1基では、10年以上の必要量になります。それを使いきるような規模の栽培をされているならばたいへんお得です。
使い易さは、ハイポニカがベストです。濃縮された液体になっていますので、それを規定どおりに薄めて使うだけです。OATボトルセットは粉末をぬるま湯に溶かして濃縮液を作らなくてはなりませんが、粉末は、専用ボトルに溶かす量ごとに分けられているので、計量の必要はなくお手軽になっています。OATハウス大袋は、精密秤で計量して使用しなければなりません。
OATハウスボトルセットと、ハイポニカは、特に知識がなくても使用可能です。OATハウス大袋は、プロ仕様というだけあって調整可能な構成になっています。1号~10号+αの粉末があり、主に1号と2号を主成分とするようですが、肥料濃度を低く設定した場合には、微量要素が不足するために、5号を添加して補えるようになっています。リン酸を強化したい場合には、9号があります。甘味のある実を作りたい場合には、1号の代りのアミノ1号を使うというように、何でも有りという気さえしてきます。【参考:OATハウス粉末処方例】
ここで、パッションフルーツの水耕栽培により、大量の収穫という形で大きく成功した例を目にしない原因を推定するに、現在良く使われている肥料は何であるかを予測しなくてはなりません。まず、私が調査したパッションフルーツの水耕栽培をされている方は、全て個人の方のようでした。それだけであると、少々根拠に欠けるのですが、そこから導かれる答えは、最も良く使われている肥料は、最も使い勝手に優れたハイポニカではなかろうか?ということです。実際、ハイポニカを使われている方のブログは良くみかけます。
もし、これが正しければ、パッションフルーツの実があまりならなかったことには合点がいきます。ハイポニカは、実をならせる成分であるリン酸が少ないのです。私は、従来の土耕栽培の場合、リン酸40%のマグァンプKを元肥とし、同じく10%のハイポネックス・レイシオ原液を追肥用に使っていますが、ハイポニカの場合、リン酸は3.8%ですので、明らかに少ないですね。
これで、3候補のうち、ハイポニカは消えたことになります。OATハウスの大袋を選ぶか、ボトルセットを選ぶかですが、なかなか悩むところですね。どちらもリン酸8%ですので、ハイポニカよりは良さそうですが、更にリン酸を添加するならば、大袋の方にはOATハウス9号があります。時期により肥料濃度を変えた方が良いようなのですが、(1号2号の)濃度を低くする時期には、微量要素が不足します。そのために、微量要素を増強する5号が必要になることもあります。しかし、ボトルセットには処方を画一化して使用上の知識を不要とするために、1号と2号しか存在しないのです。このように、心は決まりながらも揺れています。
10kgの袋をたくさんどこに置くのやら。また、肥料の力を引き出すだめには、濃度測定、PH測定(PHが6.5以上になると、マンガンや鉄等の微量要素欠乏が発生しやすくなり、pHが5.0以下になると、カルシウムなどの吸収が悪くなるそうです)、そして、それらの調整が必要です。【2014.12.05訂正】パッションフルーツの様子を見て、必要に応じて培養液の全交換または部分交換で対応することとしました。【参考:OATハウス肥料使用のための覚書】
いやはや、パッションフルーツの水耕栽培云々言う前に、水耕栽培がこんなに管理の塊とは思いませんでした。
まだ春まで時間があるので、よく頭を整理しなくてはなりません。
たいへんな事に手を出してしまったかも?というのが今の心境です。
【2014.12.05訂正】水耕栽培の実績が少ないパッションフルーツでは、調整自由度の高いOATハウス大袋肥料を駆使した場合に、多くの実の収穫という結果に結びつけるポイントを見つけ出すことが可能。ということがこの記事の結論です。
しかし、それは、たいへんなことに首を突っ込む結果となることを意味しているようにも思われます。
【2014.12.01追記】アミノハウス1号、ハウス2号、ハウス5号、そしてハウス9号を準備し、その時に合う処方をしていくと、実を確保しつつ株も大きく育つのではないかと推測しています。ただ、それらは5号を除くと10kgの大袋で、我が家のお目付け役に、「そんなものいくつも買わないでよ!!」と釘を刺されていることが問題だったのです。肥料と言えども、化学合成されたものでしょうから、大量に保管したくない気持ちはわかりますね。
ところが探せばあるもので、小分け販売をする業者がみつかりました。肥料販売をするには、自治体と省庁への登録が必要ですが、これもきちんとされているようです。
ざっくりと、一年分の肥料代を考えるに、¥1,000+αくらいになりそうです。小分けする手間を考えると安いですね。2Lの濃縮液作成用に小分けされていますので、濃縮液作成時に精密秤で計測する必要もありません。
他の入手方法も無いわけではありませんが、販売者の素性がわからないような取引は、避けておいた方がベターと考えていました。
これでOATハウス肥料を堂々と使い、皆様に経過をお伝えできます。
【2014.12.21追記】その後の調査で、筑波大学農林研究所でパッションフルーツの養液栽培の研究がされていることがわかりました。使用肥料も大塚化学(大塚ハウス)の『養液土耕2号』と明記されており、結実にも至っています。パッションフルーツの水耕栽培に対して不安を感じておりましたが、すこし先に光が見えてきた気がします。
【関連】水耕栽培カテゴリー
ホームページ拝見させて頂きました。我が家の旦那は今熱帯魚にはまっていて理論的には水耕栽培に利用出来そうです。我が家の水槽は循環式でして
エーハイムというモーターを使用しています。水草が主に中心です、そのために水は絶えず循環濾過し植物のための植え込む肥料とガスを入れていつも一定のpHに保っています。温度も25度とし夏場は窓に日よけをしています。
果たしてパッションフルーツにも適しているのかわかりませんが水質管理が大変になると思います。がんばってください。楽しみにしています。
yoko様
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
私も、10年くらいの間、アマゾンの支流域原産のディスカスという熱帯魚を飼っておりました。残念なことに、東日本大震災の後の停電で全滅してしまいました。3月でしたからね。熱帯魚には致命的でした。ヘッケルとか、ロイヤルグリーンという原種のLサイズ(約20cm)が泳いでいました。写真は、それらが元気な頃のものです。
熱帯魚にせよ、パッションフルーツのような熱帯性植物にせよ、本来日本に生息しない生物を育てることは、手がかかりますが、非日常性という安らぎを与えてくれると感じます。そんな生き物たちから貰うだけではなく、私達は、快適な環境を与える責任があるのかもしれません。
ディスカスの場合、水温は28℃に保ちますので、冬場の電気代がばかになりませんでした。寒い日などは、水面から湯気が出ていたりしたものです。水質は弱酸性を好みますが、我が家の水道水は中性のため、調整は必須でした。
その面では、PHには少し素養はあるのかも?と思います。ディスカスはPH変化に敏感で、急激にPHが変化するとPHショックをおこし、全体が黒くなり元気がなくなってしまいます。PH異常により、なんらかの変化とともに元気がなくなるのは、植物も同じかもしれませんね。
記事,読ませてもらいました.大学でトマトの養液栽培の研究を行っている者です.パッションフルーツは趣味程度ですが育てています.パッションフルーツはタマネギのようなひげ根が多く,植物体から根に酸素を多く送れるようなので,この循環式の水耕栽培では酸素不足になることはなさそうですね.水に枝を挿すだけで発根する程度ですし.パッションフルーツは通常の植物よりかアンモニア態窒素の供給が多く,トマトなんかよりアンモニア態窒素吸収速度が速いです.また,当方の栽培ではアンモニア態窒素が不足すると葯の開きが悪く,アンモニア態窒素が多すぎると柱頭が上を向いた,実が肥大しない花が咲きます.私は水耕ではなく養液栽培で栽培していますが,硝酸態:アンモニア態の比率はme換算で8:2程度がよいと考えています(私の場合は複数の単肥を使用していますので比率を弄るのが簡単ですが,ハウス1号を使用する場合は2000倍程度の濃度になるように尿素を入れるとよいと思います).
T・F様
貴重なコメントありがとうございます。
当地はイチゴの産地として知られている土地柄なの
ですが、最近では水耕栽培が増えてきているような
のです。
そもそもそんなことから、パッションフルーツの水耕
栽培を試してみたのですが、結果としては、秋の果
実に関しては、土耕を大きく上回るものでした。
但し、パッションフルーツのメインは春~夏のもので
しょうから、課題は残っています。土耕に比べて春先
の株の生育が遅れたのです。
これは、土と水の比熱の問題で、尚且つ装置では遮
光をはかっていることにより、水耕の場合には、根の
周囲温度が上がるのに時間がかかるためかと推測し
ております。
装置を含めたコストや夏~秋の培養液補給の手間も
課題です。マンションのベランダで、水耕栽培のパッ
ションフルーツが流行るには、もうひと考えが必要な
ようです。
トライすべきアイデアが生まれましたら、記事にいたし
ますので、その節にはご指導くださいますようお願い
いたします。
TF様
>>アンモニア態窒素が不足すると
葯の開きが悪く,アンモニア態窒
素が多すぎると柱頭が上を向いた,
実が肥大しない花が咲きます.
とございますが、私のところでは、
実が肥大しない花が結構出ており
ます。(今年現状12個中3個)
そこでご、アンモニア態窒素濃度
のコントロールの可否と、その方
法についてご教授いただきたく宜
しくお願い致します。