同じ花や同種の花粉では結実しない自家不親和性(自家不和合性ということもあります)のパッションフルーツとしては、黄果皮ジャンボ種、赤紫果皮ジャンボ種、エドゥリス黄実などがあります。
普通、自家不親和性のパッションフルーツに果実を結ばせるには、花が咲いたときに同時に花粉を提供する種の花も咲いている必要があります。しかしこのように偶然のタイミングに頼っていると、せっかく咲いた花をみすみす諦めることになる場合があるのです。
そこで、花粉の低温保存という方法をとることにより、花が咲いたときに備えて花粉を備蓄しておく方法をとります。
「同じ花や、同種の花粉で果実を付ける種もあるのに、どうしてそこまで面倒なことをするのか?」
そう思われるかもしれませんね。
自家不親和性種の魅力
それは、結ぶ果実が魅力的だからなのです。
果実の大きさ
ジャンボ系の果実の大きさは、最大で長さ100mm、重さ200gと言われています。エドゥリス黄実も昨年見た花のサイズからしておそらく長さ90mm程度でしょう。一般的に自家受粉で結実するパッションフルーツは長さ70mm、重さ80gくらいですので、大きくサイズが異なります。
おいしさ
味については私自身未体験ですので、体験談を述べることはできませんが、ジャンボ種に関しては、苗の入手元のフラワーショップ江口様のHPで、『その甘酸っぱいおいしさに…必ず虜になるはずです。● ジャンボ系が一番甘くて美味しいですよ!正直…ジャンボ系を食べたら他は食べられないかもしれません。(店長談)』と、黄果皮ジャンボ種、赤紫果皮ジャンボ種の紹介部分に堂々と掲げておられます。様々な種類のパッションフルーツ苗をあつかっているショップ様が、こう言っちゃって良いものかと思ってしまうほどですが、そこからはあながちセールストーク的意味合いばかりではなく、真にパッションフルーツの栽培を楽しんでいる人ならば、必ずそこ(=ジャンボ種の栽培)にたどり着く筈、といったようなメッセージを感じることさえできます。
エドゥリス黄実についてはインターネット上を探しても味に関する情報にめぐりあえず、その味はわかっていませんが、食べなれている紫種とはすこし違うのかもしれません。
要は、「少しの困難をクリアしさえすれば、大きな喜びを得ることができる。」それが、自家不親和性のパッションフルーツを結実させるということだと思うのです。私の中では、困難のクリアこそが楽しみという部分もあります。
この投稿では、今日開花した黄果皮ジャンボ種の授粉について紹介し、一人でも多くの方を魅力的な自家不親和性パッションフルーツの世界にお誘いできればと考えております。
黄果皮ジャンボ種が開花
仕事に出かける前の観察により、今日咲くだろうとはわかっていたために、後ろ髪引かれる思いで出かけたのですが、仕事を終え、15:00くらいに帰宅すると、一輪の黄果皮ジャンボ種の花が私を待つように咲いていました。
6月27日の赤紫果皮ジャンボ種の開花をかわきりに、ジャンボ種の開花期が始まったようです。この花でジャンボ種3つめ目になります。
以下、私のやっている授粉の手順をご説明します。
雄しべの採取
黄果皮ジャンボ種は、赤紫果皮ジャンボ種を結実させることができますので、今後開花する赤紫果皮ジャンボ種のために雄しべを採取し備蓄します。
採取した雄しべは、『出し入れ用』と書かれた湿気止め入りタッパーで密封保存し、雄しべの水分が抜けるまで(通常5時間くらい)常温保管します。
十分に水分が抜けたところで、冷蔵庫保管用のタッパーに移し、冷蔵します。常温で水分を抜くプロセスを設けているのは、冷蔵庫保存用タッパー内に水分を持ち込まないようにするためです。冷蔵庫保存用タッパーには既に先に採取した雄しべが入っていますので、その劣化を最小限にするためです。
授粉
雄しべの冷蔵庫からの取り出し
まずは、冷蔵庫保存用タッパーから保存してある雄しべを取り出します。咲いた花が黄果皮ジャンボ種ですので、赤紫果皮ジャンボ種の花粉が必要です。
下が冷蔵庫保存用タッパー、上が出し入れ用タッパーです。冷蔵庫保存用タッパーから出し入れタッパーに、必要数の雄しべを入れます。ちなみに、完全に乾燥した雄しべはミイラ状になりこんなに細くなるのです。採取直後の画像と比べるとまるで別ものですよね。ピンセットで掴むのも容易ではない形です。
冷蔵保管中の雄しべの劣化を最小限にするために、冷蔵庫保存用タッパーを手早く冷蔵庫に戻すように作業をおこなう必要があります。外には、出し入れ用タッパーで必要量だけを持ちだします。
授粉作業
授粉作業は、雄しべを落さないように慎重におこないます。乾燥していてまるで棒のようですので、ピンセットで掴みにくいうえに、万一落すとみつからなくなりやすいと思います。
我が家の現状では、少しのあいだ赤紫果皮ジャンボのおしべが希少になりそうなため、1個の雄しべで3本の雌しべに授粉しましたが、数に余裕があれば、2個とか3個とかの雄しべを使った方が確実かもしれません。まぁしかし、これくらい花粉が付いていれば問題ないでしょう。
いつもこんな面倒なことをするわけではありません
こんなことをするのは、花粉をもらう側と供給する側が同時に咲かない場合だけです。黄果皮ジャンボ種と赤紫果皮ジャンボ種のように開花期がまったくかぶる組合せで双方の開花が本格化すれば、保存した花粉を使用することもない日も多くなるでしょう。そうなれば、「あちらの花からこちらの花へ、こちらの花からあちらの花へ」という授粉をすれば良いのです。
ジャンボ種は育てやすい
株を大きく育てて多くの収穫をねらう場合に気になるのは、冬越しではないでしょうか。その点ではジャンボ種は育て易いです。
耐寒性は、エドゥリス紫系と同じくらいで、冬越しは容易な部類です。エドゥリス黄実は、寒さに弱いのが難点で、冬越しに気を使います。ただ、梅雨入り以降の旺盛さは、エドゥリス黄実が一番です。
自家不親和性パッションフルーツ。それはまた違った楽しみを提供してくれるのです。